不動産鑑定評価基準


第1章価格に関する鑑定評価
第1節土地
T 宅地
1.更地
更地の鑑定評価額は、更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比
準価格並びに土地残余法(建物等の価格を収益還元法以外の手法によって求めるこ
とができる場合に、敷地と建物等からなる不動産について敷地に帰属する純収益か
) 。ら敷地の収益価格を求める方法による収益価格を関連づけて決定するものとする
再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当
該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、
さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法とい
う。)
(1)一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更
地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築
費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
(2)分割利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更
地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成
費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、
敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。

2.建付地
建付地は、建物等と結合して有機的にその効用を発揮しているため、建物等と密
接な関連を持つものであり、したがって、建付地の鑑定評価は、建物等と一体とし
て継続使用することが合理的である場合において、その敷地について部分鑑定評価
をするものである。
建付地の鑑定評価額は、原則として更地としての鑑定評価額を限度とし、配分法
に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとす
る。
この場合において、当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難
易の程度等敷地と建物等との関連性を考慮すべきである。

3.借地権及び底地
借地権及び底地の鑑定評価に当たっては、借地権の価格と底地の価格とは密接に
関連し合っているので、以下に述べる諸点を十分に考慮して相互に比較検討すべき
である。
@ 宅地の賃貸借等及び借地権取引の慣行の有無とその成熟の程度は、都市によ
って異なり、同一都市内においても地域によって異なることもあること。
A 借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではなく、ま
た、借地権取引の慣行について、借地権が単独で取引の対象となっている都市
又は地域と、単独で取引の対象となることはないが建物の取引に随伴して取引
の対象となっている都市又は地域とがあること。
B 借地権取引の態様
ア借地権が一般に有償で創設され、又は継承される地域であるか否か。
イ借地権の取引が一般に所有者以外の者を対象として行われる地域であるか
否か。
ウ堅固建物の所有を目的とする借地権の多い地域であるか否か。
エ借地権に対する権利意識について借地人側が強い地域であるか否か。
オ一時金の授受が慣行化している地域であるか否か。
カ借地権の譲渡に当たって名義書替料を一般に譲受人又は譲渡人のいずれが
負担する地域であるか。
C 借地権の態様
ア創設されたものか継承されたものか。
イ地上権か賃借権か。
ウ転借か否か。
エ堅固の建物の所有を目的とするか、非堅固の建物の所有を目的とするか。
オ主として居住用建物のためのものか主として営業用建物のためのものか
カ契約期間の定めの有無
キ特約条項の有無
ク契約は書面か口頭か。
ケ登記の有無
コ定期借地権等(借地借家法第二章第四節に規定する定期借地権等)

(1)借地権
@ 借地権の価格
借地権の価格は、借地借家法(廃止前の借地法を含む)に基づき土地を使。
用収益することにより借地人に帰属する経済的利益(一時金の授受に基づくも
のを含む)を貨幣額で表示したものである。。
借地人に帰属する経済的利益とは、土地を使用収益することによる広範な諸
利益を基礎とするものであるが、特に次に掲げるものが中心となる。
ア土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地人の安定的利益
イ借地権の付着している宅地の経済価値に即応した適正な賃料と実際支払賃
料との乖離(以下「賃料差額」という)及びその乖離の持続する期間を基。
礎にして成り立つ経済的利益の現在価値のうち、慣行的に取引の対象となっ
ている部分

A 借地権の鑑定評価
借地権の鑑定評価は、借地権の取引慣行の有無及びその成熟の程度によって
その手法を異にするものである。
ア借地権の取引慣行の成熟の程度の高い地域
借地権の鑑定評価額は、借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に
基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて得た価格を標
準とし、当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となって
いる部分を還元して得た価格及び借地権取引が慣行として成熟している場合
における当該地域の借地権割合により求めた価格を比較考量して決定するも
のとする。
この場合においては、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。
(ア)将来における賃料の改定の実現性とその程度
(イ)借地権の態様及び建物の残存耐用年数
(ウ)契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間
(エ)契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
(オ)将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
(カ)借地権の取引慣行及び底地の取引利回り
(キ)当該借地権の存する土地に係る更地としての価格又は建付地としての価


イ借地権の取引慣行の成熟の程度の低い地域
借地権の鑑定評価額は、土地残余法による収益価格を標準とし、当該借地
権の設定契約に基づく賃料差額のうち取引の対象となっている部分を還元し
て得た価格及び当該借地権の存する土地に係る更地又は建付地としての価格
から底地価格を控除して得た価格を比較考量して決定するものとする。
この場合においては、前記アの(ア)から(キ)までに掲げる事項を総合
的に勘案するものとする。

(2)底地
底地の価格は、借地権の付着している宅地について、借地権の価格との相互関
連において賃貸人に帰属する経済的利益を貨幣額で表示したものである。
賃貸人に帰属する経済的利益とは、当該宅地の実際支払賃料から諸経費等を控
除した部分の賃貸借等の期間に対応する経済的利益及びその期間の満了等によっ
て復帰する経済的利益の現在価値をいう。
底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求め
ることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定するものとする。この
場合においては、前記(1 、A、アの(ア)から(キ)までに掲げる事項を総 合的に
勘案するものとする。

また底地を当該借地人が買い取る場合における底地の鑑定評価に当たっては
当該宅地又は建物及びその敷地が同一所有者に帰属することによる市場性の回復
等に即応する経済価値の増分が生ずる場合があることに留意すべきである。

4.区分地上権
区分地上権の価格は、一般に区分地上権の設定に係る土地(以下「区分地上権設
定地」という)の経済価値を基礎として、権利の設定範囲における権利利益の内
容により定まり、区分地上権設定地全体の経済価値のうち、平面的・立体的空間の
分割による当該権利の設定部分の経済価値及び設定部分の効用を保持するため他の
空間部分の利用を制限することに相応する経済価値を貨幣額で表示したものであ
る。
この場合の区分地上権の鑑定評価額は、設定事例等に基づく比準価格、土地残余
法に準じて求めた収益価格及び区分地上権の立体利用率により求めた価格を関連づ
けて得た価格を標準とし、区分地上権の設定事例等に基づく区分地上権割合により
求めた価格を比較考量して決定するものとする。

U 農地
公共事業の用に供する土地の取得等農地を農地以外のものとするための取引に当た
って、当該取引に係る農地の鑑定評価を求められる場合がある。
この場合における農地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考とし
て決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて
決定すべきである。
なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ず
る損失の補償として農業補償が別途行われる場合があることに留意すべきである。

V 林地
公共事業の用に供する土地の取得等林地を林地以外のものとするための取引に当た
って、当該取引に係る林地の鑑定評価を求められる場合がある。
この場合における林地の鑑定評価額は、比準価格を標準とし、収益価格を参考とし
て決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて
決定すべきである。
なお、公共事業の用に供する土地の取得に当たっては、土地の取得により通常生ず
る損失の補償として立木補償等が別途行われる場合があることに留意すべきである。

W 宅地見込地
宅地見込地の鑑定評価額は、比準価格及び当該宅地見込地について、価格時点にお
いて、転換後・造成後の更地を想定し、その価格から通常の造成費相当額及び発注者
が直接負担すべき通常の付帯費用を控除し、その額を当該宅地見込地の熟成度に応じ
て適切に修正して得た価格を関連づけて決定するものとする。この場合においては、
特に都市の外延的発展を促進する要因の近隣地域に及ぼす影響度及び次に掲げる事項
を総合的に勘案するものとする。
1.当該宅地見込地の宅地化を助長し、又は阻害している行政上の措置又は規制
2.付近における公共施設及び公益的施設の整備の動向
3.付近における住宅、店舗、工場等の建設の動向
4.造成の難易及びその必要の程度
5.造成後における宅地としての有効利用度
また、熟成度の低い宅地見込地を鑑定評価する場合には、比準価格を標準とし、転
換前の土地の種別に基づく価格に宅地となる期待性を加味して得た価格を比較考量し
て決定するものとする。

総論
第1章不動産の鑑定評価に関する基本的考察

第2章不動産の種別及び類型

第3章不動産の価格を形成する要因

第4章不動産の価格に関する諸原則

第5章鑑定評価の基本的事項

第6章地域分析及び個別分析

第7章鑑定評価の方式
鑑定評価の方式
価格を求める鑑定評価の手法1
価格を求める鑑定評価の手法2
賃料を求める鑑定評価の手法

第8章鑑定評価の手順

第9章鑑定評価報告書


各論
第1章価格に関する鑑定評価
土地
建物及びその敷地
建物

第2章賃料に関する鑑定評価
宅地
建物及びその敷地


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