★南側道路地 ★袋地(旗竿地) ★崖地 ★狭小宅地 ★過大宅地 ★無道路地 ★高圧線下地
土地は個性を持っています。
分譲地内の同じように見える土地であっても、その土地の規模、形状、接面道路との関係などによって、価値は大きく異なるものです。
よく、この地域の土地価格は坪○○円が相場と言いますが、これはその地域のごく普通の土地の価格水準です。
土地は人間の顔と同じように個別性を有していますから、この個別性を十分理解しないと土地の価格は求められません。住宅地の土地については、個別性の十分な把握・査定こそが不動産鑑定士の腕の見せ所となるのです。
例をあげて説明いたします。
★南側道路の土地★
一般には常識的と思われていることも、よく考えてみると違った見方もあります。
例えば、南側に道路のある土地の価値は一般には高いと考えられていますが、本当に価値が高いのでしょうか?
南側に道路があれば、南側の空間が確保されるため日当たりは良くなるから価値が高いと思えます。日照・通風の良否は住宅地の不動産価格に大きく影響を与えます。
けれど、南側道路の幅員が狭く、土地の面積が25坪~30坪程度の住宅地の価値は必ずしも高くはなりません。
狭い南側道路を不特定多数の人が通行するため、南側に設けた居室はいつも視線に晒される結果となり、昼間でもレースのカーテンは閉められたままになるでしょう。カーテンによって日当たりは阻害されるでしょう。
敷地が狭いため、玄関は南側に設けられることが多いのですが、考えてみれば、南側にはリビングが設置されるところ、玄関や廊下によってそれらの居住スペースが制約されることとなります。
建売住宅の分譲価格を分析すると、南側道路に面する土地は割高な価格設定がされています。これは、南側道路の土地は価値が高い!と多くの住宅需要者が思い込んでいるから、供給者である建売業者は割高に設定しているのではないでしょうか。
★袋地(旗竿地)★
袋地とは、敷地の路地状部分のみで公路に接する土地です。一般にはその形状から「旗竿地」と呼ばれています。
袋地は、
①路地状部分
②建物が建てられる有効宅地部分
に分けられます。①路地状部分の現実的な利用は駐車スペースであることが殆どです。建物を建てられる間口、面積がないため、駐車場としての利用が最も適切な利用方法というわけです。この路地状部分の価値は相当低いのは容易に理解されることと思います。
②有効宅地部分については、建物を建てられる土地ですから価値が劣ることはないように思えますが、路地状部分を介さずには道路へ接面しないため、通常は日照・通風に劣り、価値は道路に直接面している土地と比較して劣ることとなります。
この袋地は路地状部分の延長距離が長ければ長いほど、間口が狭いほど、土地全体の価値は低くなります。路地状部分の延長距離と間口によって、建築できる用途、延床面積を制約している自治体も多くあります。
ですから、袋地の土地価格は一般に普通に道路に接面している土地と比較して、少なくとも10%~30%程度価値が低くなるのが相応と言えます。
ところが、必ずしも袋地の価値が低いとは言えないこともあるのです。
例えば「別荘地」。別荘地のような土地面積が広く、路地状部分の幅員も広い場合、道路に直接建物が面していないことから、かえってプライバシーが保持され、需要が高いということもあるのです。
「崖地」についても、別荘用地の場合には必ずしも価値が低くならない場合があります。
例えば崖の傾斜方向が景勝地に向って下っている場合、眺望・景観に優るため、むしろ価値が高い場合も多くあります。
★狭小宅地★
狭小宅地については、建物の建設が可能か否かにより価値が大きく異なります。
家が建てられないほど小さい土地については、駐車場として賃貸する場合の収益性に基づく価値、隣接地から併合される期待性に基づく価値など、価値は相当低いはずです。
最近では、狭小宅地を専門とする建築家がいらっしゃって、条件によっては10坪程度でも家を建てていますから、家が建てられないか否かの判断は難しいのですが・・・
しかし、家が建てられる狭小宅地については、単価的にはもの凄く高い価格になります。地域的な土地相場が坪80万円とすると1割から2割程度高く、100万円を超えることもザラです。
普通、人が家を買うときには土地・建物の総額でソロバンを弾くのです。ローンが組めるかどうか、つまり買えるか買えないかの判断は総額に基づくのです。家を買う時に土地価格幾ら、建物価格幾らという計算はあまりしないのではないですか。
狭小宅地に3階建の分譲住宅を建設し、販売される総額は、地域的な総額での相場よりも絶対額は低くなります。同時に土地単価は割高になります。
分かり易く説明すると、A土地120㎡、2階建物100㎡程度の総額での相場が47,000千円だった場合、B土地80㎡、3階建物100㎡建売住宅の総額が39,800千円だとする。建物価格をいずれも17,000千円とすると、A土地の価格は30,000千円、単価826千円/坪、B土地の価格は22,800千円、単価942千円/坪となり、狭小宅地の土地単価は14%も割高となっている。
総額の相場が47,000千円であれば横浜市内であれば中級の住宅地域と言えます。この比較的環境の良い住宅地域で総額39,800千円の住宅は割安感から魅力のある物件に映るのでしょうか。この手の3階建て狭小住宅のミニ分譲が多く見られます。
けれど、将来、この狭小3階建住宅を売却する場合、狭小地であるため流通性が劣ることは覚悟しておく必要性があるのではないでしょうか。
★過大宅地★
住宅やアパートが混在するような既成住宅地に、そこだけ取り残されたように、森のようになった大きなお屋敷を目にします。そのお屋敷の土地が売却される場合、価格は周辺の住宅地の価格と比較してどうなるのでしょうか?
その土地が立体的な利用ができるか否かによって大きく異なるのです。
簡単に言えば、立地条件等によりマンションの建築が可能であれば、割高で取引され、土地を区画割して戸建の分譲しかできない場合は周辺の住宅地より安く取引されます。
マンションの建設が可能ならば、土地は立体的に利用されるため単位面積あたりの土地価格は上昇すると考えられます。戸建の分譲しかできない場合は、道路などを新たに築造する必要性があり、販売できない潰地が発生するため、少なくともその部分は価格が低下するのです。
★無道路地★
無道路地とは、公路に全く接していない土地である。建築基準法では例外を除き建物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接する必要があります。無道路地は現状のままでは建物の建築ができないため、その価値は大きく劣ることとなります。少なくとも5割程度は価値が劣ると考えるのが一般的です。
無道路であっても、道路との距離によって大きく価値が左右されます。道路との距離が僅か1mの場合と道路までの距離が30mの場合では、道路に接面する用地取得の可能性が大きく異なるからです。
理論的に無道路地の価格を評価するのは難しいのですが、最低限必要とされる用地を取得する場合を想定し、無道路地と当該用地全体の価格を評価し、これから想定される用地取得費用を控除した額に、想定される用地取得に要する期間を考慮した複利現価率を乗じ、更に不確実性に伴う一定割合を乗じて求める方法もあります。
★高圧線下地★
一般の方は気にならないのか、高圧線が走っている下の建売住宅を平気で買われます。このような高圧線下地の建売住宅の分譲価格を分析すると、高圧線下地の住宅と、その隣の敷地の住宅価格が変わらないことがよくあります。不思議です。
高圧線下地については、電圧の強さによって建物の建築が出来ない場合と2階建住宅程度の建物であれば建築可能な場合があります。建売分譲住宅の場合、後者にあたるため、もちろん適法です。
けれど、高圧線下地についてはマイナス要因があるので、この点は理解されたいところです。
- 断線の危険性
- 雨天における不快音の発生(ジージーという音が断続的にあります。)
- 立地によっては眺望・景観を阻害する要因となります。
- 電磁波が人体に及ぼす影響(研究段階ですが、因果関係を認める学者もあります)
住宅は快適かつ安全なものでなくてはなりません。したがって、好んで高圧線下地を買う必要があるのかなと思うのです。
最後に、土地の価格(更地価格)を評価するのは、とても難しいものです。
通常、土地の価格を求める方式は、取引事例比較法と収益還元法、場合によっては開発法を適用します。
更地は未利用地ですから、収益還元法では最適と考えられる建物を想定し、この建物を賃貸することによって生み出される土地に帰属する収益性を求める必要があります。この最適な建物を想定するのが非常に難しいのです。住宅地の場合ですと、一般にアパートのようなものを想定しますが、商業地の場合には建物の種類、建物ボリューム等、その他、法的制限等いろいろな想定要素が絡んできます。
鑑定士のなかに、「私は更鑑(主に公共機関からの更地の評価ばかりしている鑑定士)ですから」と謙遜ともとれるような発言をされる先生もいらっしゃいますが、更地が一番難しい類型であることを再認識されたいと思うのです。