急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域の土地評価

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土地の評価について

急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域の土地について

急傾斜地崩壊危険区域は危険でしょうか?土砂災害警戒区域の方が危ないのでは?

急傾斜地崩壊危険区域の指定につきましては、概ね高さ5m以上、傾斜角度が30度以上の自然崖があり、仮に崖が崩落等した場合に、少なくとも5戸以上に影響がある場合において、周辺住民が自ら「要望書」を、通常は県へ申請します。崖の崩壊に伴い危険性があると思われる土地所有者全員の同意(署名・押印)が必要であり、実際上、全ての所有者の同意が得られず、申請が止まるケースも多くあります。

昨今の、集中豪雨等に伴い崖地の崩壊等により家屋の倒壊、人的災害が毎年のように発生するなか、個人の資力では、抜本的な防災工事をするには過大な費用を要するため、放置された危険崖が多く見られます。そこで、県では、市民の安全性の確保のために急傾斜地崩壊危険区域の指定と無償での擁壁工事等を積極的に推進しているところだと思います。

急傾斜地崩壊危険区域に指定されている箇所は、県により堅牢な擁壁等が設置されますので、そのまま崖を放置している場合(例えば土砂災害防止法の土砂災害警戒区域)と比較して、崖下・崖上の住戸の安全性は担保されているように思えます。

丘陵地が多く、崖地が多い地勢の横浜市では崖下の建築に際して、いろいろと制限をしています。 しかし、急傾斜地崩壊危険区域内については、安全性が担保されていることからその制限の適用が以下のとおりありません。

横浜市建築基準条例第3条第1項では、
高さ3メートルを超える崖(一体性を有する1個の傾斜地で、その主要部分の勾配が30度を超えるものをいう。以下この条において同じ。)の下端からの水平距離が、崖の高さの2倍以内の位置に建築物を建築し、又は建築物の敷地を造成する場合においては、崖の形状若しくは土質又は建築物の規模、構造、配置若しくは用途に応じて、安全上支障がない位置に、規則で定める規模及び構造を有する擁壁又は防土堤を設けなければならない。ただし、次のいずれかに該当する場合においては、当該部分については、この限りでない。
例外規定として、 横浜市建築基準条例第3条第1項第6号で、
崖の下に建築物を建築する場合において、その崖の全部が急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第12条第1項又は第13条の規定による急傾斜地崩壊防止工事により整備されているとき。
と規定され、急傾斜地崩壊防止工事により整備された場合には特段の規制はないということになります。

また、災害危険区域について同条例第3条の2では、災害危険区域は、次に掲げる区域としています。
(1) 急傾斜地法第3条第1項及び第3項の規定により、神奈川県知事が急傾斜地崩壊危険区域として指定して告示した区域(神奈川県知事が当該区域の指定を廃止して告示した区域を除く。)と同じ区域。
これは急傾斜地崩壊危険区域に指定されているが、まだ未整備の区域という意味です。
(2) 前号に掲げる区域のほか、市長が指定して告示した区域

そうして、災害危険区域内の建築行為に対して以下のような厳しい条文を規定しています。
災害危険区域内に居室を有する建築物を建築する場合においては、当該建築物の基礎及び主要構造部は、鉄筋コンクリート造又はこれに類する構造としなければならない。ただし、当該建築物が面するすべての急傾斜地(急傾斜地法第2条第1項に規定する急傾斜地をいう。以下この条において同じ。)が、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
以下のような例外規定を限定列挙しています。
(1) 高さが5メートル未満の急傾斜地
(2) 急傾斜地法第12条第1項又は第13条の規定による急傾斜地崩壊防止工事により整備されている急傾斜地

これらの条文から読み取れることは、急傾斜地崩壊防止工事により整備されている急傾斜地は横浜市条例により、安全性が確認されていると判断されます。

むしろ、危険なのは「土砂災害防止法」による土砂災害警戒区域ではないでしょうか?

今のところ、建築物の建築等にあたって、制限はありません。しかしながら、急傾斜地崩壊危険区域に指定されている区域(擁壁施工前)と、崖による危険度は変わらないものだと思えます。急傾斜地崩壊危険区域内の土地は、実際には、堅固な擁壁により、安全性が担保されているのですから、土砂災害警戒区域内の土地で防災工事を施工していない土地よりも、土地の減価率(価値が下がるということ)が大きくなることはないと判断します。

但し、心理的側面での減価は発生していると思います。
これは、急傾斜地崩壊危険区域という名称そのものに、取引等にあたり、買主等に心理的圧迫感を抱かせる名称になっているからだと思います。「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」に規定する区域なので仕方がないのですが、この点において取引当事者、とりわけ買主には警戒感があるようです。宅建業者(仲介業者)も、この法律の趣旨や防災意識の高い住民が自主的に指定を望んだ経緯、実際には安全性が担保されていること等をよく理解せずに重要事項説明の際にあやふやな説明をしている場合もあります。